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2004.10.20

犬には色はどう見えているか

041020dog

※『犬の科学』より。左が通常のヒトが見ているもの、犬には右のように見えている。スペクトルは上が人間の色覚スペクトル、下が犬のもの。クリックすると拡大表示されます。

これまで犬に関する本はけっこう読んできたつもりだったが、今年(04年)2月に翻訳が刊行された『犬の科学ーほんとうの性格・行動・歴史を知る』(スティーブン・ブディアンスキー/渡植貞一郎訳/築地書館=原著「The Truth About Dogs」2000)ほど素晴らしい本に出会ったことはない。

著者のブディアンスキーは、科学雑誌「NATURE」編集部を経て「USニューズ・アンド・ワールド・レポート」誌の副編集長。「科学者・作家・ジャーナリスト。そして犬好き」。
最新の科学的知見を批判的に踏まえていること、そして、犬に対する人間中心主義的な見方や、近代が「国民国家」や「民族」とともに作り出した「純血」概念などをしりぞけて「あるがままの犬を偏見無く認めること」を主張していること、これらを通して犬とのつきあい方だけではなく、我々自身のものの見方、あり方に反省を迫っていること、等が他の凡百の犬本とはまったく違うのだ。

興味深い話が満載なのだが、きょうは犬の色覚について。

長い間、霊長類以外、犬などの大多数の哺乳類は色をまったく知覚できないと思われてきた。しかし最近の研究・実験では犬は明らかに色を知覚すると確定された。ただし人間の色覚障害と同じように限られた色だけを知覚する。
上の知覚スペクトラムで分かるように、犬には「赤ーオレンジー黄ー緑」の範囲の色がひとつの色(濁った黄色というか)として、また「青ー紫」の範囲の色が別のひとつの色(濁った青というか)として見える。この2つの色が白〜灰色〜黒と違って見えているのだ。
人間は色覚の検査でほぼ百通りの色調の違いを識別できるが、犬は白〜黒以外ではこの2つの色調しか識別できない。
芝生の上の赤やオレンジのおもちゃは、人間にとってはとても目立って見えるが、犬には芝生の緑と見分けるのはかんたんではないのだ。同じく盲導犬は、赤・黄・緑の信号を色で見分けて主人に注意を促しているわけではない。

恐竜が跋扈していた時代、ほそぼそと出現した初期の哺乳類に許された唯一の存続環境は「夜」だった。彼らに必要なのはなによりも「夜間視力」であり、弱い光には敏感でない「色」を感知する「色識別光受容細胞」の一部を捨ててでも、弱い光にも敏感なもうひとつの「光受容細胞(色は識別できない)」を発達させた。その結果が夜行性の狼に受け継がれ、やがて分化した犬にも残っているのだという。
ただし、彼らは白黒だけではなく、少なくとも2色の色彩知覚を持っているので、単に明暗だけのカムフラージュにはだまされにくい。また人間には識別しがたい灰色の影の微妙な差を区別できるらしい。

この色覚スペクトラム変換を誰かPhotoshopのフィルターとして作ってくれないだろうか。
犬と同じ目線(もちろん人間と犬は視野角と立体視できる範囲が違い、また犬はだいたい70cm以内のものには焦点が合わない、などの違いはあるが)で撮った写真画像にこのフィルターをかけると犬にはどう見えているかがすぐ見て取れる、などというのはとても面白いではないか。

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コメント

こんなふうにワンちゃんは見えているんですね。勉強になりました!

投稿: ポン | 2007.06.11 09:16

「緑」と「赤」を識別できたとかできないとかいろいろ報告があっても、その「緑」や「赤」が同じものなのかどうかがわからないと何とも言えないですよね。

>2007.06.10 21:46
印刷物をスキャナでRGB化してモニタで映したものですから、気にされることはないと思います。印刷物もスキャナもモニタも「正常色覚」に合わせて作られているものですから。

投稿: aoi | 2007.06.11 01:16

私は色覚異常なので,犬が見ている映像と人間が見えている映像の違いがあまり判りませんでした。ショックです・・・・・

投稿: . | 2007.06.10 21:46

こにゃにゃちは!
初めまして・・・・
犬ってモノクロの世界しか見えていないと思っていました。だから色のある世界が見えている・・・何か嬉しいです♪

投稿: アーリー | 2007.06.10 21:34

「犬には色はどう見えているか」というのは、
「あなたと私は同じように見ているのか?」
という疑問と似ていると思いませんか?

萌葱、漆黒、rouge、greenなど、色を表す単語はありますが、そういう色ではない色を犬は見ているのかもしれない。

「人間には識別しがたい灰色の影の微妙な差を区別できるらしい」って、人間とは違う色彩感覚があるのだとも思えます。

人は、「色」という捉え方をする独立した「感覚」があるといえるのかもしれませんが、犬も同じ感覚を備えているのだろうか?人で言えば「色覚」+「臭覚」というような一つの感覚を持っていて、「灰色の影の微妙な差を区別」を「色覚」とは異なる感覚で捉えているのかもしれないし…。

或る犬になって見てみたいものです。

投稿: OOKAMIOTOKO | 2007.06.10 20:34

きっこさん

現代の最新の研究結果では緑も赤も認識できる犬はいないでしょう。
Micの血統書(2005.1.27)
http://oak.way-nifty.com/radical_imagination/2005/01/mic_2.html
で書いたように、犬は何万年にもわたってすべて「雑種」です。
「犬種」「純血腫」などと言われているのは、たかだが19世紀後半に、ヴィクトリア朝的「血統概念」をもとに作り出された人為的な概念にすぎません。
そしてこうした姿形や特質を同じくするものを「純粋」として交配し続けることは自然のなかでは虚弱体質をうみやすく、ハイブリッド(交雑種)の方がより高い活力を示すのです。

ですから実験の対象が「雑種」であったかどうかということにはなんの意味もありません。

投稿: TAKAMI Toshio | 2005.09.26 05:09

あの、某HPで犬の色覚について書かれていたので載せます。

「1800年代にすでに犬が緑と赤を認識している、という報告があります。ただし、その実験には、ロシア在来の雑種の犬が使われたので、どの犬種にもあてはまるかはどうかはよく分かっていません。」

と記載してあったのですが、緑が識別できる犬もいるってことですかねぇ?

投稿: きっこ | 2005.09.24 14:36

猫も基本的に犬と同じような色覚だろうと思いますが、最近の実証研究がどうなっているかは知りません。
1999年、現ハーバード大学のスタンレー・ギャレットという研究者が、猫の脳の視床(視覚神経を通して直接、猫の目に繋がっている)にある177個の細胞に電極を取り付けてそれらの活動を調査し、猫が見ている世界をコンピュータで映像化した、という報道がありましたが、ネットでは見ることができませんでした。
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/skidmore/Computer_uses_cat's_brain_to_see.htm
http://people.deas.harvard.edu/~gstanley/index.htm

色覚ということに限らず、動物の世界認識ということに関しては日高敏隆『動物と人間の世界認識』(筑摩書房/2003)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4480860681/249-5504841-3135567
の「ネコたちの認識する世界」をお読みになられるといいと思います。

秀吉の朝鮮出兵に同行させられた猫、というのは面白いですね。
「時計がわり」というのはどうなのかなあ。なにか他の目的があったような気もします。

投稿: 高味壽雄 | 2004.10.21 05:09

犬の眼に映る映像、ほんとうに面白いですね。興味深く拝見しました。先生ネコのはありませんか? 週末ガラス工芸学会の見学会で鹿児島の黎明館で開催中の薩摩切子の展覧会を見にゆきました。磯公園(旧島津別邸)の大名庭園の中に、「猫屋」と称する神社のようなものがあり、朝鮮出兵の際に同行(?)した七匹お猫様の霊が祭られていました。瞳孔の開き具合を観察して、時計代わりにご活躍いただいたのだそうです。そういえば日々のネコの行動は実に正確で、我が家では、朝起きるのも、夜寝るのもお猫様に生活指導していただいています。

投稿: 池田まゆみ | 2004.10.20 21:53

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