『久田大吉の中国料理馳走録』(柴田書店)
上野毛の私の大学キャンパス隣の四川料理「吉華」は久田大吉さんの店として有名だ。
久田さんは1944年長崎県生まれ。高卒後中国料理人を志し、四川料理の雄、故陳建民のもとで修行、85年世田谷上野毛に店を開く。個人的には麻婆豆腐はここが一番。上野毛「ミキ」でもよくご一緒する。
この『久田大吉の中国料理馳走録』(柴田書店)は、前菜、魚介類、肉・内臓類、野菜、豆腐とその他、スープ、麺と飯、点心、醃菜(漬物)に分け、レシピと調理プロセスを写真とともに丁寧に掲載してある。
ひとつひとつの料理はもちろんおもしろいのだが、一番最後に「中国料理をおいしくつくるこつを考えてみました」というわずか1ページに記されたことが印象深い。
簡単にまとめると、
1. 素材の切り方と調味のバランスをとる
調理は刀工技術(包丁の使い方、切り方)と鍋(加熱、味つけ)のバランスが最も大切。素材に適した切り方、調理法や味つけに合った切り方をしなければ素材の持ち味を生かすことはできない。
2. 材料に応じた調理をする
新鮮な材料は材料本来の味を生かし調味料の味で殺してはならない。
生臭みのあるものはさまざまな調味料で生臭さを取る。
素材そのものに味のないものは旨味を補う。
3. 味付けは状況に応じて臨機応変に
ビジネス街のランチなら御飯のおかずになるよう少し濃いめに、年配のお客には薄味に、若い人にはボリュームを。
またその土地の気候や季節にも関係する。
料理は決まりきったものではない。時と場合によって臨機応変に対応する想像力が必要なのだ。
以前触れたフレンチの巨匠アラン・シャペルは『ルセットを超えるもの』(柴田書店・音羽和紀訳ー現在絶版 ※「ルセット」は「レシピ」)で「ルセットは、その時々の気分や素材から即興的になされるものを考慮に入れずに、ただ書いてある通りにコピーするよう、ひとに要求する。想像の自由を成り立たせるもの、変化、革新、驚きといったさまざまな喜びのうちに創り出されるものを完全にないがしろにする。てこでも動かぬ焼網(鉄格子)がいっしょだと、ルセットも監獄に似てくる」と述べた。
極めた人たちは洋の東西を問わず結局同じことを言っている。
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